通常の物理現象は空間反転を行っても変わらないように見える。具体的には、まったく見知らぬ国の映像がテレビに映っている場合、その画面が通常どおり撮影されたのか、一度鏡に反射させてから撮影されたのかは、通常の物理現象を見ているかぎりは判別できない。この様に空間反転した状態と元の状態で物理法則が変わらないことをパリティ対称性がある、または、パリティが保存されているという。
1956年にヤン(
楊振寧、Chen Ning Yang)とリー(
李政道、Tsung-Dao Lee)は、当時説明不能だった
K中間子の崩壊に関する現象を説明するため、弱い相互作用が関与する物理現象ではパリティの対称性が破れると予想した。この予想は、
1957年にウー(
呉健雄、Wu Chien-Shiung)により、弱い相互作用が関与する物理現象である
ベータ崩壊を観測する実験で確かめられた。ヤンとリーは、この功績により
1957年の
ノーベル物理学賞を受賞した。
ウーの実験では、
放射性核種である
コバルト60を極低温に冷却し、
磁場をかけて多数の原子の
スピンの方向をそろえた状態で、コバルト60がベータ崩壊して発生するベータ粒子の出る方向が調べられた。コバルト60のスピンと同じ方向に
ベータ粒子がでるベータ崩壊と、その反対方向にベータ粒子がでるベータ崩壊は、空間反転した関係にあり、パリティが保存されているなら、2つの崩壊が起こる確率は同じはずである。(上から見て右回りに回っているときの上の方向をスピンの方向という)。実験の結果、ベータ粒子はコバルト60のスピンと同じ方向よりも逆の方向に多く放出されているのが観測され、パリティ対称性の破れが起こっていることが確認された。
[ベータ粒子(電子)はスピンを持っている。この実験では磁場をかけている。そのためベータ粒子は(ベータ粒子の)スピンの方向によって出てゆく向きが異なる。]