アロマテラピー wikipedia|無料辞書
アロマテラピー()は、
花や
木など植物に由来する芳香成分(
精油)を用いて、心身の健康や美容を増進する技術もしくは行為のこと。
また、
お香やフレグランス・キャンドルも含め、生活に自然の香りを取り入れて
ストレスを解消したり心身をリラックスさせることも含めて呼ぶ場合も多い。
アロマセラピー()とも。
◆ 語源
アロマテラピーという言葉は、20世紀に入ってからフランスの科学者
ルネ・モーリス・ガットフォセによって作られた造語で、アロマは芳香、テラピーは療法を意味するフランス語である。これを英語で発音するとアロマセラピーとなる。
「アロマトテラピー」と「ト」が入る表記について、「芳香療法」意味する単語として文法的語源的には正しい。
◆ 歴史
芳香植物の利用は古代にさかのぼるが、
精油の製法が確立したのは中世であり、アロマテラピーそのものが提唱されたのは20世紀に入ってからである。また日本への紹介は1980年代以降である。
◇ 芳香植物の利用
人類は洋の東西を問わず、植物の芳香を祭祀・儀礼・
治療・
美容に用いてきた。エジプトで
ミイラ作りに防腐効果のある
乳香(
フランキンセンス)や
没薬(
ミルラ)などの植物由来の
香料が用いられていたのは有名な例である。芳香植物の利用は世界の各地域で独自に発展し、近代医学が発達する以前の人間の健康を担ってきた。今でもそれらは、
伝統医学や
民間療法として受け継がれている。
中世ヨーロッパでは、芳香植物の栽培と利用はもっぱら修道院の仕事であり、植物成分を水や植物油・
アルコールに浸出して用いた。一方、イスラム圏では
アラビア医学が発達し、
イブン・シーナー(980年頃-1037年頃)は
蒸留による精油の製法を確立し医学に応用した。これはアロマテラピーの原型とも考えられている。このアラビア医学は十字軍の遠征などを契機に徐々に西欧にも伝わっていった。
ルネサンス時代には
香水が大流行し、精油の生産量が増大した。19世紀にはいると合成
香料が出現し、また植物から有効成分だけを抽出して薬剤として用いるようになった。
◇ アロマテラピーの提唱
20世紀初頭、科学的な分析・検証の上で
精油を心身の健康に応用しようという試みが始まった。1920年代初頭、南フランスのプロバンス地方において、
香料の研究者であった
ルネ・モーリス・ガットフォセ(1881年-1950年)は実験中に手に火傷を負い、とっさに手近にあった
ラベンダー精油に手を浸したところ
[ 佐々木薫 『最新版アロマテラピー図鑑』 主婦の友社、2009年、6頁。]傷の治りが目ざましく良かったことから、精油の医療方面での利用を研究し始めた。彼は1928年に研究の成果を学会で発表し、また『芳香療法(原題
Aromatherapy)』という本を出版した。
フランスの医学博士
ジャン・バルネ(1920年- )は精油を使った医療を実践して功績をあげ、1964年に『ジャン・バルネ博士の植物=芳香療法』を著し(1984年改訂版発行)、アロマテラピーの認知度を上げた。他方、ガットフォセの弟子である
マルグリット・モーリー(オーストリア生まれ、?-1963年)は、アロマテラピーを主に美容方面に活用できる技術として研究し、イギリスに伝えた。
このため、現在のアロマテラピーには大きく分けてフランス系とイギリス系の二つの流れがあり、フランス系のアロマテラピーは医師の指導のもと精油を内服するなど、医療分野で活用されている。イギリス系のアロマテラピーはアロマセラピストと呼ばれる専門家によって施されるなど、
医療とは区別され、心身のリラックスやスキンケアに活用されている。
◇ 日本のアロマテラピー
精油の蒸留法は江戸時代に伝わり蘭医学などで用いられていた。明治時代には
ニホンハッカなどの精油を輸出していた時期もあったが、合成香料や海外の廉価品におされ、廃れてしまった。
1970年代に、小学生やその親たちの間でポプリ()が流行し、ドライハーブへの関心が高まった。アロマテラピーが紹介されたのは1980年代で、はじめジャン・バルネや
ロバート・ティスランドらによる英仏の専門書が高山林太郎氏により邦訳され、やがて海外で技術を学んだ者たちが国内で実践を始めた。1990年代に
エステブームなどに乗って広まったこともあり、日本に伝わったアロマテラピーの方法はイギリス系に近いものであるが、近年では国内でも精油への科学的アプローチが進み、
代替医療としてアロマテラピーに関心を寄せる医療関係者も増えている。2006年頃からバラの香りをかつてない程に再現した、本物のバラの精油よりも大幅に安価な合成香料が開発され、それを添加したガムやドロップが製品が流行し汗がバラの香りと言われて男女間で話題になり、「香り・アロマ」への関心が大衆の間でさらに高まる。
◆ アロマテラピーのしくみ
アロマテラピーの主役である
精油が心身に働きかける経路は二つある。ひとつは嗅覚刺激、もうひとつは皮膚や粘膜を通して血流に乗り体内に入る経路である。しかし精油は数十から数百の揮発性
有機物の混合物であり、ひとつひとつの成分がどのように影響するのかを追跡するのは容易ではない。
◇ 精油の嗅覚刺激
蒸散した精油の芳香成分は鼻で感知され、嗅覚刺激として
大脳辺縁系に到達する(嗅覚の詳しいシステムについては
嗅覚の項を参照)。ここで重要なのは、嗅覚をつかさどる部位が、
脳の中でも本能的な部分である旧皮質に存在することである。脳は嗅覚刺激を受け取ると無意識のうちに
情動を引き起こし、
視床下部に影響を与える。視床下部は身体機能の調整を行う中枢であるため、匂いは本能的に身体諸器官の反応を引き起こす鍵となりうる。
精油の香りによって得られる安心感・快感・緊張感・覚醒感・瞑想感などにともなう情動が、心身のバランスを促すことが期待される。
◇ 精油が血流に乗る経路
芳香成分が血流にいたるまでには様々なルートが考えられる。吸収された成分は、最終的にはほとんどが肝臓や腎臓で代謝され、尿とともに排泄される。
吸収ルートは大別すると次の4つである。
・
呼吸により、鼻から喉・気管支・肺にとどく間に
粘膜に吸着し、粘膜下の血管に入るルート。
・ 呼吸により
肺胞でのガス交換時に酸素とともに血流に乗るルート。
・ 経口で口から小腸に至る
消化管から吸収されるルート(
坐剤として肛門や膣の粘膜から吸収させる例もある)。
皮膚は多層構造になっており、皮膚に吸収された芳香物質の血管への到達は極めて緩慢である。呼吸器からの吸収はこれよりも早いが、空気中の芳香物質の濃度を考えれば吸収されるのは微量と思われる。皮膚や呼吸を通して吸収されるルートに比べ、消化管での吸収は非常に急激で多量である。消化管の粘膜に対する強い刺激が予想され、また異物である精油成分の血中濃度が急速に高まるため、代謝系に大きな負担がかかる恐れがある。強酸である胃酸による成分の変性の可能性も捨てきれない。このため、精油の経口もしくは坐剤による使用は、十分に知識のある医師の判断のもとで行われるべきである。
◇ 精油の体内での作用
・アロマテラピー page1
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